【人手不足】若者はどこへいったのか…日本の現状と原因とは

現代の中小企業経営者にとって、若者の人材不足は深刻な課題です。「若者はどこへ行ったのか?」という問いに対する答えを見つけるために、さまざまな要因を探る必要があります。

若者の人材不足の背景を把握し、適切な対策を講じるためのヒントを得ることができます。この記事では、若者がどこへ行ったのか、そしてその背景にある要因を具体的に掘り下げます。

目次

【人手不足】若者はどこへいったのか:原因とは

現代の中小企業経営者にとって、若者の人材不足は深刻な課題です。「若者はどこへ行ったのか?」この問いに対する答えを見つけるために、いくつかの主要な要因を探ってみましょう。

若者の人数が減っている

少子化が進行する日本では、若者の絶対数が減少しています。1990年代の出生率低下は、今まさに労働市場に影響を与えています。具体的には、1990年代初頭には1,500万人を超えていた15-24歳の人口が、現在では1,000万人を下回るまで減少しています。

将来的には、若者の減少傾向がさらに顕著になることが予想されます。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2040年には15-24歳の人口がさらに減少し、800万人を下回るとされています。この状況が続けば、企業間の若者を巡る競争はますます激化し、人材確保が一層困難になるでしょう。

若者はどこへいったのか…一番の原因は人口の減少です。

多くの若者は大企業を選ぶ

人口が減少していても若者はいます。しかし多くの若者は大企業へ集まっています。若者の多くが大企業に応募する背景には、いくつかの要因があります。まず、求人倍率です。

従業員の規模、つまり企業の大きさによって求人倍率に差があります。2024年3月卒では従業員が5000人以上企業の求人倍率はおおよそ0.4倍で買い手市場です。従業員が300人~4999人企業も、求人倍率が1.14と人材不足ではありますが、人手不足問題に直面している企業は全体的に多くないと考えられます。

しかし、300人未満の企業は倍率が約6.2倍と完全な売り手市場です。このように若者は大企業へ集まっているのが分かります。若者はなぜこのように大きい企業にあつまるのでしょうか。

●従業員規模別求人倍率

引用:リクルートワークス研究所:求人倍率調査

大企業は設備が整っており、職場環境が快適であることが多いです。また、労働条件も整っています。高い給与、充実した福利厚生、安定した雇用があります。

求人ブランディングも大企業の魅力を高める要素です。大企業はブランド力が強く、就職先としての魅力を広くアピールできます。しかし一番差がつくのは、求人への本気度です。リクルーターを専任で配置し、応募者とのコミュニケーションを密に行うなど、優秀な人材を確保するために本気で対策をしています。

不人気な職種は若者がこない

職種でも求人倍率にはかなりの差があります。職種別の求人倍率を見ると、不人気な職種には応募が少ないことが明らかです。

●令和6年4月:職業別求人倍率

職種有効求人倍率(パート含む)有効求人倍率(パート除く)
専門的・技術的職業従事者1.912.2
事務従事者0.620.62
販売従事者2.822.83
サービス職業従事者3.613.41
保安職業従事者6.137.18
農林漁業従事者1.411.53
生産工程従事者2.112.22
輸送・機械運転従事者2.522.81
建設・採掘従事者5.416.25
運輸・清掃・包装等従事者1.281.2
参考:厚生労働省:一般職業紹介状況

特に3K(きつい、汚い、危険)と呼ばれる職種は、若者から敬遠されがちです。2023年のデータによると、介護職や建設業の求人倍率は他の業種に比べて非常に高く、求人数に対して応募者が不足している状況が続いています。

都心部へ移動する若者

地方から若者が都心部へ流入する現象は人材不足の一因となっています。特に20代、30代の若者は仕事の選択肢が多く、生活の利便性が高い都市部に移住する傾向があります。

東京都の2023年の人口移動報告によると、東京23区への転入者数は約40万人で、そのうち20代が約50%を占めています。これは、都心部に多くの企業が集積し、賃金水準が高く、交通インフラが整っているためです。また、キャリアアップの機会も豊富で、大企業の研修やスキルアッププログラムも充実しています。

しかし、この流入は地方の労働力不足を深刻化させ、特に製造業や農業など地元産業に影響を与えています。地方の中小企業は人材確保に苦労し、地域コミュニティの弱体化も進行しています。若者の流出により、地域の活力が失われ、高齢化が進み、地域行事や伝統文化の継承が難しくなるなど、社会的な影響も大きいです。

フリーランスを選択する若者の増加

インターネットの普及により、フリーランスという働き方が増加しています。若者は自由な働き方や自己実現を求め、企業に縛られないライフスタイルを選ぶことが多くなっています。

総務省のデータによると、2023年にはフリーランスとして働く人の数は過去最高を記録し、その多くが若者であることが分かっています。例えば、Webデザイン、プログラミング、コンテンツ作成、オンラインマーケティングなど、インターネットを通じて行える仕事が多く、これらの分野でフリーランスとして活躍する若者が増えています。

フリーランスは、自分のペースで働くことができ、特定の時間や場所に縛られないため、仕事とプライベートのバランスを取りやすい点が魅力です。特に、デジタルネイティブ世代である若者にとって、オンラインプラットフォームやソーシャルメディアを活用してクライアントを獲得し、プロジェクトベースで働くことは自然な選択となっています。

海外への流出

海外への若者の流出は、労働市場の変化を反映しています。データによると、海外在留邦人数は年々増加しており、特に長期滞在者の数が1989年の約34万人から2023年には約71万人に達しています。

●海外在留邦人数調査統計

令和5年:海外在留邦人数推計推移データ
引用:外務省:海外在留邦人数調査統計

若者が海外に流出する理由には、キャリアアップの機会や高賃金、良好な労働条件が含まれます。例えば、アメリカやヨーロッパの主要都市では日本より賃金水準が高く、優れた福利厚生や労働環境が提供されています。さらに、異文化に触れることで自己成長を図りたい若者も多く、海外での生活経験は個人の成長や人間関係の幅を広げるのに役立ちます。また、海外の大学や専門学校で高度な教育を受けるために留学する若者も増えています。これらの要因が重なり、若者の海外流出は今後も続くと予想されます。

若者だけではない:人手不足はいつまで続く?日本の現状

今の日本は深刻な人手不足に直面しています。大企業でも7割が人手不足を感じているというデータもありますが、この状態はいつまで続くのでしょうか?

答えは「悪化する」です。

2030年から本格的に人材不足が始まります。そう、わずか5年後のことです。そして、2040年にはなんと1100万人もの労働人口が減少する見込みなのです。人手不足の問題は多角的で深刻です。企業はこの現実に対応するための戦略を今から練る必要があります。では、具体的に何が起こるのでしょうか。

より競争が激化する

まず、採用競争の激化です。今の状況を想像してみてください。現在、大手企業は人材確保のために必死です。しかし、これからはその競争がさらに激化します。資金力のある企業は、賃金や待遇を大幅に引き上げ、積極的に採用活動を展開します。対策を早くから行っている中小企業は、競争の中で勝ち残ることができるかもしれませんが、事態の深刻さに気づかない企業は、気づいたときには既に手遅れです。まるで静かに迫り来る嵐の前の静けさのように、突然、圧倒的な採用競争に飲み込まれてしまいます。準備を怠ると、目の前で優秀な人材が次々と他社に奪われ、企業の未来が失われていくのを見届けるしかありません。

採用コストが上昇する

求人競争が激化すれば、当然のことながら採用コストも上昇します。すでに求人媒体などの採用コストは増加傾向にありますが、これから先、人手不足が顕著になれば、採用コストがさらに上がるのは避けられません。今まで数万円で確保していた人材が、2倍、3倍のコストをかけても確保できないかもしれません。コストはうなぎ登りに増加し、経営の負担はどんどん大きくなります。採用コストの増加は単なる未来の話ではなく、すぐそこに迫った現実なのです。

また、賃金の上昇も問題です。昔に比べて従業員の賃金がどんどん上がっているのを実感していることでしょう。政府は2030年半ばまでに最低賃金を1500円に引き上げることを目標に掲げています。しかし、この賃金で、今のように新しく人を雇っては辞め、また雇うというサイクルを維持できるのでしょうか?答えは簡単ではありません。労働力不足を背景に労働者の賃金が上昇し、企業の人件費が増加します。

そして、高齢者の増加に伴い、社会保障費用が増大します。企業に対する税負担が増加し、経営にさらなる負担がかかるのです。社会保障費用の増大は、企業にとって避けられない現実です。この負担は経営の持続可能性を脅かし、企業の財政を圧迫します。

高齢化による生産性の低下:実質的な労働力の減少

高齢化により労働人口が減少するということは、若い労働者がますます少なくなるということです。これにより、従業員の平均年齢が上がり、体力の低下とともに生産性も低下します。若い力が不足することで、企業全体の活力が失われていくのです。体力の衰えは避けられず、従業員一人一人のパフォーマンスにも影響が出ます。これは実質的な労働力の減少を意味し、生産性の低下が企業の成長を阻む大きな要因となります。

さらに、高齢化による従業員の介護問題も深刻です。親の介護で短縮勤務や休職、転職を余儀なくされる話はよく耳にしますが、これからさらに高齢化が進むと、この問題はますます深刻になります。多くの従業員が介護の問題を抱え、仕事に集中できなくなるのです。愛する家族の世話をしなければならず、休職や時短勤務、残業ができない状況に追い込まれます。これが企業全体の労働時間の減少につながり、労働力が不足し、仕事の効率が下がり、生産性が大きく低下するのです。

人材不足によるミスマッチ

人材を確保できたとしても、企業は適正なスキルや経験を持たない人材を雇用することを余儀なくされる場合があります。これが全体の業務品質の低下を招く恐れがあるのです。

適切なスキルを持たない人材が業務に就くことで、効率が落ち、生産性が低下し、結果として企業全体のパフォーマンスが悪化します。これは実質的に労働力の減少と同じことを意味します。質の低い雇用は、企業の成長を妨げるだけでなく、競争力を失わせる大きな要因となります。優れた人材を育てるための教育やトレーニングが必要ですが、それにも時間とコストがかかります。

人手不足対策はどうすればいい

現代の中小企業が直面する人手不足の問題は、単に求人を出せば解決する時代は終わりました。これからは、求職者に選んでもらえる企業になるための具体的な対策が必要です。以下に、いくつかの具体的な対策を挙げます。

どうしても、この記事で全て伝えることには限界があります。そのため、1度で良いのでセミナーにてご自身の目で見極めて欲しいと思います。セミナーはこちら↓

採用戦略の徹底:本気で取り組む採用活動

中小企業ほど人手不足の問題に直面していますが、実際には大企業の方が採用に本気で取り組んでいるケースが多いです。今や求人媒体に掲載するだけでは優秀な人材は集まりません。これから人手不足がさらに顕著になる中で、求職者に選んでもらえる企業になるためには、積極的に採用活動を行う必要があります。具体的には、採用ブランディングを強化し、会社の魅力をしっかりとアピールすることが重要です。

戦略的な人材採用計画の策定

どのような人材が必要か、どのような人物が欲しいかを明確にすることが大切です。数年後の組織図を作成し、必要な人材を具体的に把握することで、求人票の文言やアプローチ方法が明確になります。これにより、ターゲットとなる人材に適切なメッセージを届けることができ、効果的な採用活動が展開できます。

効果的な企業PR:情報をしっかりと伝える

中小企業に多いのが情報の少なさです。求職者の目線に立ち、具体的でわかりやすい情報を提供することが必要です。仕事内容、給与、キャリアアップの機会、スキルアップのサポート、人間関係、社風など、求職者が不安を感じないように、しっかりと情報を公開しましょう。これにより、求職者は企業のイメージをつかみやすくなり、応募へのハードルが下がります。実際に情報が少ないことで求職者は躊躇してしまいます。

●採用ページの情報不足が原因で応募をためらった割合

採用ページの情報不足が原因で応募をためらった割合
引用:ヒトクル:求人情報不足が原因で、9割以上が応募をしなかった経験あり!

給与と福利厚生の改善:求職者に魅力的な環境を提供

給与や福利厚生の改善は基本的な対策ですが、効果は大きいです。必ずしも高待遇を提供する必要はありませんが、同業他社と比較して平均以上を目指すことで、求職者にとって魅力的な企業となります。特に、中小企業は同規模の他社との競争になるため、平均的な待遇を維持しつつ、可能であれば一歩先を行く福利厚生を提供することで人が集めやすくなります。

しかし、給料や待遇がよければ必ずしもいい人が集まるわけではありませんので注意しましょう。

ミスマッチの防止:適材適所の採用

採用活動において、応募があっても内定辞退や早期退職が多発すると、人手不足の解消にはなりません。ミスマッチを防ぐためには、求職者に対して正確な情報を提供し、企業文化や仕事内容を明確に伝えることが必要です。これにより、企業に合った人材を確保し、定着率を高めることができます。特に今後人手不足が深刻化する中で、長期間にわたって戦力として活躍できる人材を確保することが重要です。

人手不足解消事例:他社のご紹介

経済産業省の中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会で中小企業・小規模事業者の人手不足対応事例集がだされています。取り組み内容や仕組み、取組前後の効果も掲載されていますので、興味がある方は是非参考にしてください。

⇒参考:経済産業省:中小企業・小規模事業者の人手不足対応事例集

掲載されている企業の取り組みを一部ご紹介します。

株式会社いせん(越後湯澤HATAGO井仙):人材確保事例

所在地:新潟県南魚沼郡湯沢町湯沢2455
創業:1952年
資本金:1,000万円
従業員数:32人
事業概要:旅館業

取り組むきっかけ

慢性的な人手不足に直面する中、従業員が無理なく働ける環境を整えることが急務となりました。同時に、「旅籠三輪書」として掲げる企業理念に基づき、お客様の満足、従業員の生きがい、地域の発展を実現するための具体的な対策が必要でした。

取り組み内容と仕組み

  • 業務の見直しと多能工化の推進:業務負担を軽減するために仕事内容を見直し、旅館業以外にも飲食業、物販業、旅行業、製造業など様々な事業を展開し、多能工化を推進しました。これにより、従業員は事業の枠を超えて多様な働き方や勤務体系を選べるようになりました。
  • 充実した教育プログラム:「組織力向上研修」、「リーダー研修」、「メンター制度」などの社員教育を充実させ、キャリアアッププログラムを導入。従業員が興味ある分野を伸ばし、新たな分野に興味を持つ機会を提供しました。
  • 地域への貢献:湯沢地域全体の活性化を重視し、旅館を「地域のショールーム」と位置づけ、地域で取れる素材や商品をお客様に提供。また、雪国観光圏の産業を支援し、地域に住む若者の活躍の場を増やしました。

取組後の効果

  • 売上と従業員数の増加:10年間で売上と従業員数は3倍に成長しました。
  • 働き方の選択肢が広がる:多能工化の推進により、従業員は自分に合った働き方や勤務体系を選べるようになり、働きやすい環境が整いました。

株式会社いせんの取り組みは、従業員の働きやすさを追求しつつ、地域にも貢献することで、企業としての成長を実現しています。

エーゼロ株式会社:人材確保事例

所在地:岡山県英田郡西粟倉村大字影石895
設立:2015年
資本金:40万円
従業員数:9人
事業概要:サービス、建築・不動産、農林水産業

取り組むきっかけ

創業以来、急成長を続けるエーゼロ株式会社では、社内の体制整備や経営基盤の整理が急務となりました。トップと各現場とのコミュニケーション不足が課題となり、これを解決するためには「経営の要」となる中核人材が必要でした。しかし、既存の人材は業務で手いっぱいで、新たな成長を支える人材が不在の状況でした。

取り組み内容と仕組み

  • 事業と人材像の整理:成長している事業の現状や自社が目指すビジョンを整理し、株式会社日本人材機構等の外部と対話しながら、必要な人材像を明確化しました。
  • WEBやSNSでの情報発信:求人情報をWEBやSNSで発信し、整理した要件を魅力的に伝えるよう工夫しました。特に、経営者自身のSNSアカウントを活用して情報発信を行い、中小企業庁主催のマッチングイベントにも参加しました。
  • マネージャークラスの人材確保:明確化した人材像に基づき求人を行った結果、マーケティングを担当するマネジメント人材と、農林水産業のマネジメントを担当する人材をそれぞれ1名ずつ確保しました。

取組後の効果

  • 社長の負担軽減:マーケティング担当者の採用により、社長の業務負担が軽減し、経営の相談相手としても貴重な存在となりました。
  • 組織の安定と成長:必要な人材を確保することで、社内の体制整備が進み、経営基盤の強化が図られました。

エーゼロ株式会社の取り組みは、急成長を支えるために必要な人材を確保し、組織の安定とさらなる成長を実現しています。

株式会社オハラ:人手不足解消事例

所在地:石川県金沢市柳橋町甲14-1
創業:1959年
資本金:8,000万円
従業員数:80人
事業概要:食品製造業(農産物加工品等)

取り組むきっかけ

株式会社オハラでは、さつま芋加工などの期間限定の仕事に対応するための作業員確保に苦労していました。また、商品の需要拡大に伴い、工場の稼働時間を延ばして増産を図りたかったのですが、ハローワークや求人誌での募集では応募がありませんでした。

取り組み内容と仕組み

  • 高齢者に届く新聞チラシによる求人:高齢者を活用している友人経営者の助言を受け、高齢者が注目しやすい新聞チラシで求人を行いました。特に「60歳以上限定」という求人チラシを新聞に折り込んだところ、多数の応募がありました。また、新聞に取り組みの記事を書いてもらうことで相乗効果を狙いました。
  • 朝の短時間勤務制度:午前5時から午前9時30分までの朝の短時間勤務制度を導入しました。この時間帯は高齢者にとって勤務しやすく、短時間で負担の少ない体制を構築しました。

取組後の効果

  • 工場稼働時間の延長と増産:労働意欲の高い高齢者が集まり、工場稼働時間を延ばすことができました。その結果、増産を実現しました。
  • 高齢者の模範的役割:高齢者は早朝勤務を厭わず、遅刻や欠勤もありませんでした。さらに、同社では社員が互いに感謝を伝え合う文化があり、早朝から働く高齢者は「達人」と呼ばれ、若い社員の模範となっています。

株式会社オハラの取り組みは、高齢者の労働力を活用することで、工場の稼働時間を延ばし、増産を実現するとともに、社内の活性化にもつながっています。

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