人手不足が深刻化する中、採用活動に苦しむ企業は数多く存在します。しかし、そんな状況でも「選り好み」をしているように見える企業が少なくありません。
「なぜ採用がうまくいかないのか？」「なぜ応募者が集まらないのか？」という疑問を持つ経営者や人事担当者も多いでしょう。実際には、いくつかの具体的な理由が背景にあります。本稿では、その理由とともに、選り好みの落とし穴について詳しく探っていきます。
人手不足なのに選り好みする理由
人手が足りていないんだったら待遇をあげて人材を集めたり、選んでいる場合じゃないから採用したらいいなど声があります。たしかに人手不足のまま現場を放置すると悪循環が起こり会社にも従業員にもよくない影響がおこりますが、経営者視点では異なる見方もしています。
それでは経営者はなぜ人手不足なのに選り好みをしてしまうのでしょうか。
1. 「入れてから育てる」の限界
「入れてから育てる」という発想は、一見理想的に見えるかもしれません。しかし、実際には多くの課題が待ち受けています。例えば、基礎的なスキルや知識が不足している新人を採用した場合、彼らを一人前に育てるためには膨大な時間とリソースが必要です。
教育係のベテラン社員たちは日々新人の指導に追われ、自分の業務が滞ることも少なくありません。その結果、プロジェクトの進行が遅れ、顧客からの信頼を失うことも。さらに、成長が期待通りに進まなかった場合、再度の採用と教育にかかるコストは会社の負担となります。企業はこのようなリスクを避けるためにも、初期の採用基準を見直すことが求められます。
2. 採用基準を誤るリスク
採用基準を誤ると、会社にとって大きなリスクとなります。例えば、技術職において必要なスキルを持たない人材を採用すると、プロジェクトの進行が大幅に遅れ、品質の低下が避けられません。これにより、顧客からのクレームが増加し、契約のキャンセルや売上の減少につながります。
さらに、内部でのミスやトラブルが頻発し、社員の士気も低下。長期的には会社全体の信頼性が損なわれ、競争力を失う危険性があります。適切な採用基準を設けることは、企業の健全な運営に欠かせない要素です。
3. 価値基準を守る
採用基準を下げたとしても、自社がお客様に提供する価値基準を引き下げるわけにはいきません。例えば、サービス業で低スキルの人材を増やすと、接客の質が低下し、顧客満足度が急落します。これにより、リピーターが減少し、口コミサイトでの評価も悪化。新規顧客の獲得が難しくなり、最終的には売上に大きな影響を与えます。
企業は常に高い価値基準を守り続けることが求められ、これは従業員の質に直結します。採用基準を安易に下げることは、長期的な企業価値を損なうリスクがあるのです。
4. 応募の少なさの現実
「選り好みしていない」と感じる企業も多いですが、そもそも応募の電話すらないという現実に直面しています。これは、企業の魅力が十分に伝わっていないか、求人票の情報が求職者のニーズに合致していないことが原因です。
例えば、企業のビジョンや働く環境、福利厚生についての情報が不足している場合、求職者にとって魅力的に映らないことが多いです。また、求人票に具体的なキャリアパスや成長の機会が明示されていないと、求職者は将来性を感じられません。企業は求人票の内容を見直し、自社の魅力を効果的に伝える工夫が必要です。
5. 誰でも採用する企業の人手不足
選り好みしなくても誰でも採用する企業も、人手不足に悩んでいます。未経験者や適性のない人材が増えると、業務の効率が低下し、品質が担保されなくなります。これにより、顧客満足度の低下やクレームの増加、ひいては企業の評判の低下という悪循環が生まれます。
例えば、適性のない人材が増えると、基本的な業務すらままならず、現場は混乱します。このような状況では、顧客からの信頼を失い、長期的には売上の減少に繋がります。誰でも良いという採用方針では、問題解決にはならないのです。
6. 選抜の必要性
会社のレベルを維持するためには、選抜を行うことが不可欠です。適切な選抜を行わないと、質の高いサービスや製品を提供することができず、競争力を失う可能性があります。
例えば、技術力の高い人材を確保することで、プロジェクトの品質を向上させ、顧客からの信頼を得ることができます。選抜を怠ると、品質低下とともに会社の信頼も失われるリスクがあります。さらに、適材適所でない配置は、社員の不満を引き起こし、離職率の増加にもつながります。選抜を通じて、企業の強みを維持し、発展させることが重要です。
7. 離職リスクの懸念
すぐに辞められるリスクも考慮しなければなりません。適材適所でない場合、社員の不満が高まり、離職率が上がります。これにより、再度採用と教育にコストがかかり、企業の成長を妨げる要因となります。
例えば、マーケティングの仕事を希望して入社した社員が、実際には全く異なる業務を担当させられると、ミスマッチによりストレスを感じ、早期に退職してしまうことがあります。さらに、離職者が多いと、残った社員の負担が増え、全体の士気が低下する可能性もあります。企業は、採用基準を見直し、社員が長期的に働きやすい環境を整えることが重要です。
まとめ
人手不足の中で企業が選り好みをしてしまう理由には、多くの要因が絡んでいます。まず、「入れてから育てる」という発想が広まっていますが、このアプローチには限界があります。低い基準で採用された人材には、膨大な教育とマネジメントが必要となり、結果的に会社全体の効率を下げるリスクがあります。
さらに、採用基準を誤ることは、企業にとって大きなリスクです。基準を下げることで一時的に人手不足を補えても、長期的には会社に付加価値を生むどころか、負債を生む可能性が高まります。また、企業がお客様に提供する価値基準を守るためには、一定の採用基準を維持することが不可欠です。
応募が少ない現実に直面する企業は、求人情報が求職者にとって魅力的であるかを再評価する必要があります。誰でも採用する方針を取っても、質の低い人材を大量に採用することで、業務の質が低下し、顧客満足度が下がる結果になります。
会社のレベルを維持し、競争力を保つためには、選抜を行うことが重要です。また、適材適所の配置を怠ると、社員の不満が高まり、離職率が上昇し、再度の採用と教育にコストがかかります。
総じて、人手不足の時代においても、質の高い人材を見極め、適切に採用することが、企業の長期的な成功の鍵となります。選り好みをしないという姿勢を見直し、現実的かつ効果的な採用戦略を構築することが求められています。企業は今こそ、採用方法を再検討し、柔軟で戦略的なアプローチを取る時期に来ています。
