人手不足なのになぜ雇わない?企業の考えと現場の叫び

多くの企業が深刻な人手不足に直面しているにもかかわらず、新たな人材を採用しない理由は一体何なのでしょうか?企業の経営者たちの考えや戦略、そして現場で働く従業員たちの実際の声を掘り下げ、なぜこの状況が発生しているのかを明らかにします。この記事では、企業が新規採用を控える背景と、それによる現場の影響について詳しく解説します。

目次

人手不足なのになぜ雇わない?雇えないのかも

多くの企業が現在、人手不足に直面しています。実際に人手不足と感じている企業は平均して50%を超えているようです。

●全国の法人の人手不足割合グラフデータ

全国の法人の人手不足割合グラフデータ
引用:全国の法人の人手不足割合グラフデータ

それにもかかわらず、新たな人材を採用しない経営者も少なくありません。この矛盾した状況には、いくつかの理由が存在します。

企業が採用を控える背景には、コストやリソースの問題、経済状況の不透明さ、内部の組織再編成など、さまざまな要因が絡み合っています。以下では、経営者が人手不足にもかかわらず採用を見送る理由について詳しく見ていきます。

コスト削減

企業が人手不足にもかかわらず新たな人材を採用しない理由の一つは、コスト削減の必要性です。新たに人を雇うことには、多額の費用が伴います。給与や福利厚生だけでなく、採用活動自体にかかる費用、研修や育成に必要なコストも加わります。特に中小企業においては、限られた予算内での経営が求められ、コスト効率を重視する傾向があります。

さらに、経済状況が不安定な時期には、収益が予測できず、将来の経費に対する不安が増すため、採用活動を控える判断が下されることが多いです。結果として、既存の従業員の負担が増える一方、新たな人材を迎えるための準備が整わないまま、コスト削減の名の下に採用が見送られるケースが見受けられます。

人手不足だけど選り好みしてる

企業が人手不足だけど選り好みしてる理由には、適任者の不足があります。特定のスキルや経験を持つ人材が求められる職種では、候補者の数が限られていることが多いです。そのため、適任者が見つからないまま採用活動が難航するケースが頻発します。さらに、求職者が企業文化や職場環境に合わない場合、採用後に問題が生じる可能性があるため、慎重に選考を進める必要があります。

また定着率が低い場合は自社に合っている人材でないと早期退職する可能性があるため、さらに採用コストが発生する可能性があります。

特に中小企業では、少人数のチームでの協力が求められるため、適任者の選定が一層重要です。自社に合っていない人材を採用することはこの結果、企業は「選り好み」するようになり、適任者が見つかるまで採用を見送ることになります。

育成基盤の不足

企業が人手不足にもかかわらず採用を控える理由の一つとして、育成基盤の不足が挙げられます。新たに雇用した人材を効果的に育成するためには、トレーニングプログラムや指導体制が整っていることが重要です。しかし、多くの中小企業では、このような育成基盤が十分に整備されていないことが多いです。

新入社員を効果的に育成するためには、時間とリソースが必要です。特に専門的なスキルや知識が求められる職種では、育成プログラムが欠かせません。育成基盤が不足していると、新たな人材を迎えても、その人材が即戦力として機能するまでに時間がかかります。

採用失敗のリスク

企業が新たな人材の採用を控える理由には、採用失敗のリスクがあります。採用が失敗した場合、企業にとって大きな損失となる可能性があります。新たな従業員が期待通りのパフォーマンスを発揮できない場合、採用にかかった費用や時間が無駄になるだけでなく、チームの士気や生産性にも悪影響を及ぼすことがあります。

特に中小企業では、少人数のチームで運営されているため、一人の採用失敗が企業全体に与える影響は大きいです。このため、企業は採用プロセスに対して非常に慎重になり、リスクを最小限に抑えるために、適任者が見つかるまで採用を見送ることが一般的です。採用失敗のリスクを軽減するためには、選考プロセスの改善や、採用後のフォローアップ体制の強化が求められます。

雇えるほどの利益がない

多くの企業が新たな人材を採用する際に直面する大きな障害は、資金不足です。特に中小企業では、限られた予算の中で運営しているため、新たに人を雇うことが財政的に厳しい状況にあります。給与、福利厚生、採用活動の費用、研修や育成にかかるコストなど、雇用には多額の資金が必要です。これらの費用を賄う余裕がないため、企業はやむを得ず採用を控えることになります。

さらに、経済状況が不安定な時期には、将来的な収益の見通しが不透明であるため、企業は予算を慎重に管理する必要があります。このような状況下では、新たな雇用に踏み切ることはリスクが高く、経費削減の一環として採用を見送ることが一般的です。

経営の見通しが立たない

経済の不透明性や市場の変動が激しい現代において、多くの企業は将来的な経営の見通しが立たない状況にあります。このような不確実性の中で、新たな人材を採用することは大きなリスクを伴います。特に景気の悪化や市場の急激な変動、政治的不安定要素などがあると、企業は収益の予測が困難になり、支出を抑える必要が出てきます。

経営の見通しが立たない時期には、企業はリスクを最小限に抑えるために新規採用を控えることが一般的です。新たな従業員を雇うことは、短期的にはコストの増加を意味し、長期的には雇用維持の責任を伴うため、不確実な経済状況下では一層慎重な判断が求められます。この結果、企業は既存のリソースを最大限に活用し、内部の効率化を図る方向にシフトすることが一般的です。経済環境の安定化が見られるまでは、新規採用への積極的な取り組みが難しい状況が続くこととなります。

人手不足は会社の責任?経営者の甘え?

企業が人手不足に直面しているのは、単に外部環境の変化だけではなく、企業自身の要因も大きく影響しています。ここでは、人口減少や求人競争の激化、そして経営者の甘えが人手不足に繋がっている可能性について考察します。

人口減少

日本では少子高齢化が進み、労働力人口が減少しています。この人口減少が企業の人手不足の大きな要因となっています。特に地方では、若年層の流出により、地域の労働力がさらに減少する傾向にあります。人口減少は、長期的に見ると企業の存続にも影響を及ぼす深刻な問題です。

労働力が減少することで、企業は必要な人材を確保することが難しくなり、採用活動に多大な労力と時間を費やすことになります。また、人口減少は企業の成長機会を制限し、競争力を低下させるリスクを伴います。

求人競争の激化

企業が人手不足に直面している大きな要因の一つは、求人競争の激化です。日本では人口減少により労働力が減少し、限られた人材を巡って企業間の競争が非常に激しくなっています。特に中小企業同士では、優れた人材を確保するために熾烈な争いが繰り広げられています。

求人数の増加もこの競争をさらに激化させています。多くの企業が同時に人手不足を感じているため、積極的に求人を出しています。この結果、求職者の選択肢が増え、企業は必要な人材を見つけるのが一層難しくなっています。また、求職者側も複数の企業からオファーを受けやすくなっており、より良い条件を求めて転職活動を続ける傾向があります。

このような市場環境では、一つの企業に長期間留まる求職者が減少し、労働力の流動性が高まるため、企業は常に新たな人材を探さなければならない状況に置かれています。さらに、大都市圏への人口集中も地方の中小企業にとって大きな問題となっており、地方では特に若年層の減少が顕著で、地域経済にも大きな影響を及ぼしています。

このように、求人競争の激化は人口減少と求人数の増加が引き起こす複雑な問題であり、多くの企業が人手不足に直面する主要な原因となっています。

経営者の甘えの場合

人手不足の問題は、経営者自身の姿勢や考え方にも起因することがあります。経営者が労働市場の変化や社員のニーズに適切に対応しない場合、人手不足は悪化します。経営者の甘えや怠慢が原因で、採用活動や従業員の満足度向上に対する取り組みが不十分なケースも少なくありません。

例えば、適切な人事戦略を持たず、ただ単に人手不足を嘆く経営者は、自社の課題に対して主体的に取り組む姿勢が欠けています。また、従業員の働きやすさやキャリアアップの機会を提供しない企業は、優秀な人材の流出を招くリスクが高まります。

人手不足の職種・業界ランキング(ワースト)

令和6年4月の有効求人倍率データによると、日本では特定の職種や業界で深刻な人手不足が続いています。有効求人倍率は、求人数を求職者数で割った値であり、1を超えると求人が求職者より多いことを示します。ここでは、特に人手不足が顕著な職種・業界をランキング形式でご紹介します。

令和6年4月有効求人倍率(パート含む)有効求人倍率(パート除く)
事務従事者0.620.62
運輸・清掃・包装等従事者1.281.2
農林漁業従事者1.411.53
専門的・技術的職業従事者1.912.2
生産工程従事者2.112.22
輸送・機械運転従事者2.522.81
販売従事者2.822.83
サービス職業従事者3.613.41
建設・採掘従事者5.416.25
保安職業従事者6.137.18
引用:厚生労働省一般職業紹介状況

1位:保安職業従事者(自衛官、警察官、海上保安官、消防員など)

有効求人倍率(パート含む): 6.13倍
有効求人倍率(パート除く): 7.18倍

保安職業従事者は、最も人手不足が深刻な職種です。

2位:建設・採掘従事者(建設や電気工事、採掘といった仕事に携わる人)

有効求人倍率(パート含む): 5.41
有効求人倍率(パート除く): 6.25

建設・採掘従事者も深刻な人手不足に直面しています。インフラ整備や建設ラッシュの影響で、求人が多く発生している一方、働き手が不足しています。

3位:サービス職業従事者(介護・看護・飲食・美容・旅行業関連など)

有効求人倍率(パート含む): 3.61
有効求人倍率(パート除く): 3.41

サービス業も高い求人倍率を示しています。特に飲食業や介護業界などでは、パートタイムを含めても含めなくても求人倍率が3を超えており、働き手の不足が顕著です。

4位:販売従事者(営業・小売店・ECサイトなど)

有効求人倍率(パート含む): 2.82
有効求人倍率(パート除く): 2.83

販売業も人手不足が続いています。小売業やサービス業における店舗スタッフの不足が課題となっており、求職者よりも求人が多い状態が続いています。

5位:輸送・機械運転従事者


有効求人倍率(パート含む): 2.52
有効求人倍率(パート除く): 2.81

輸送や機械運転に従事する職種も高い求人倍率を記録しています。物流業界の拡大に伴い、ドライバーや機械オペレーターの需要が急増しています。

6位:生産工程従事者

有効求人倍率(パート含む): 2.11
有効求人倍率(パート除く): 2.22

製造業においても人手不足が続いています。特に工場での生産ラインを支える人材が不足しており、企業は必要な人材を確保するのに苦労しています。

人手不足なのに人を雇わないのは会社と従業員にデメリット

企業が人手不足に直面しているにもかかわらず、新たな人材を採用しない状況が続くことには、従業員や会社にとって多くのデメリットがあります。従業員への過度な負担、職場の雰囲気の悪化、生産性や品質の低下など、様々な問題が発生します。本記事では、人手不足が従業員や会社に与える影響と、その具体的なデメリットについて詳しく解説します。

人手不足は残った従業員に大きなしわ寄せが

人手不足が続くと、その影響は残った従業員に大きなしわ寄せとなります。業務の負担が不均衡に増えることで、従業員は通常の業務に加えて追加の仕事をこなさなければならなくなります。このような状況では、従業員のストレスが増大し、健康に悪影響を及ぼすリスクが高まります。特に、長時間労働や休日出勤が常態化すると、心身の疲労が蓄積し、仕事に対するモチベーションも低下します。

さらに、過重労働によるストレスが原因で、職場の人間関係に摩擦が生じることも少なくありません。従業員同士の不満が募り、コミュニケーションが円滑に行われなくなると、チームワークが崩れ、全体の効率が低下します。このような悪循環に陥ると、職場の雰囲気が悪化し、従業員の離職率が上昇する可能性もあります。

人手不足なのに仕事を増やす

人手不足の状況にもかかわらず、仕事量が増えると、既存の従業員に過剰な負担がかかります。特に、経営者や管理者が新たな人材を採用しないまま業務を拡大しようとすると、従業員一人ひとりに求められる仕事の量が増加します。このような状況では、従業員は効率的に業務をこなすことが難しくなり、結果として生産性の低下を招くことがあります。

また、仕事量の増加は従業員のストレスレベルを上昇させる要因ともなります。過労による健康被害が発生するリスクが高まり、欠勤や病気による離職が増えることも考えられます。これにより、企業はさらに人手不足に陥るという悪循環に陥ることが少なくありません。

生産性と品質の低下

従業員に過重労働を強いると、集中力や効率が低下し、生産性が落ちます。業務量が過多になると、従業員が一つ一つの仕事にかけられる時間が減少し、ミスや不良品が増える可能性があります。これにより、提供するサービスや製品の品質が低下し、顧客満足度が下がる恐れがあります。顧客からのクレームや返品が増えると、企業の信頼性にも悪影響を及ぼし、長期的なビジネスの成功に影響を与えます。

離職率の上昇と採用コストの増加

過重労働や職場環境の悪化により、従業員が離職するケースが増えると、企業は新たな人材を採用するためのコストや時間をかけなければなりません。特に、優秀な人材が離職すると、企業にとって大きな損失となります。新しい人材を採用し育成するためには、採用活動や研修に多大なリソースが必要です。これにより、企業の経済的な負担が増し、他の業務に影響を及ぼすことがあります。

さらに、新しい人材が定着するまでには時間がかかり、その間の業務効率が低下することもあります。既存の従業員への負担がさらに増え、離職の連鎖が続くという悪循環に陥ることも少なくありません。

雰囲気が悪くなる

人手不足による過重労働が続くと、職場の雰囲気が悪化することがあります。従業員同士の不満やストレスが高まると、コミュニケーションが円滑に行われず、チーム全体の士気が低下します。これにより、業務の効率が下がり、さらにストレスが増すという悪循環に陥ることも少なくありません。職場の雰囲気が悪化すると、新たな人材の定着も難しくなり、結果として企業全体の成長が阻害されることになります。

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