「建設業に中々人が集まらないな」「どうやったら就業者の定着に繋がるのだろうか」
建設業に対する世間のイメージや現場の実態により、なかなか就業者が集まらず人手不足に悩まされていませんか?
本記事は、建設業がなぜ人手不足に悩まされているのかを解説し、そのために取り組まれていることを紹介します。
建設業はなぜ人手不足なのか?
建設業は人手不足が嘆かれていますが、その理由はさまざまです。一企業ではどうしようもない問題から、建設業界特有の問題、その他にも考えられる理由はあります。
ここでは、建設業がなぜ人手不足なのかの理由を5つ紹介します。
建設業は賃金が低いと思われている
建設業は賃金が低いとのことで、働き口として選ばれることが少ないようです。建設業全年齢の平均給与は509万円で、全業種を含めた平均給与は433万円となっています。
一見、平均給与が高く見えますが、これは建設業の給与に、年齢間で大きく差があるからです。他業種にも言えることですが、建設業は経験年数や技術を身に着けることによって、給与が上昇します。
しかし、若い世代のうちは経験年数も技術もないため、同年代の他業種と比較すると、同じくらいかやや低くなってしまうことも。
また、建設業の平均給与を全国の地域別にみてみると、首都圏が564万円であるのに対し、北海道は444万円と大きく差が開いています。
上記のような理由から、建設業は平均給与が上回っているのにもかかわらず、賃金が低いといわれているようです。
建設業は長時間労働
建設業は、長時間労働や時間外勤務が多いことも、業界のイメージダウンに繋がっています。
労働基準法は、「1日8時間、1週間40時間」を上限に労働時間を設定しています。平成9年のデータで建設業は、年間労働時間が2026時間、年間出勤日数が253日です。令和3年のデータは、年間労働時間が1978時間、年間出勤日数が242日。
一見、減っているように見えますが、1日当たりの労働時間で換算すると、徐々に増えてきているのです。
また建設業全体で、完全週休二日制を導入している割合は19.5%で、週に1日ほどしか休めない割合が約3割を占めています。
工期が短いほどコストを抑えられるため、利益を増やすため工期のスケジュールが過密になりがちです。これは、建設業界特有の多重下請け構造が原因となっています。
建設業をやっていると雇用が不安定になる
建設業界は、「日給×出勤日数」から割り出される額を給与として支払われる会社が、全体の約3割を占めています。しかし、基本的に外で行う仕事なため、天候不良などにより仕事が中止になるケースもあるでしょう。
天候不良などの場合は、休業手当を支給する会社もありますが、どの会社にもいえることではありません。
つまり、建設業の約3割の人間が不安定な雇用形態といえるのです。
建設業は男性中心の職場環境
建設業は、男性400万人、女性83万人が就業しており、女性の就業率は約17%です。建設業は力仕事なども多く、「現場の仕事は女性にとって難しい」と考えている人が多くいます。
また、トイレやシャワーなど女性専用の設備が少ないことや、出産や子育て支援が不十分な環境が、建設業で女性が働きにくくなっているようです。
建設業はパワハラが当たり前というイメージ
建設業は、パワハラのイメージを強く持たれています。建設業の業務には、事故のリスクを伴うために、強く注意をしなければならないことが多いです。
他にも、以下のような例があります。
- 閉鎖的な職場環境がパワハラの温床となっている
- 男性中心の職場環境であるため、上下関係が厳しくされている
- 働き方改革により、残業時間を削減しサービス残業を強要する
建設業は特に縦社会が色濃く反映されており、元請け業者から下請け業者へのパワハラ被害もあるようです。また、年上の世代が若いころに受けたパワハラを、自分よりも下の世代へ同じようにするケースもあります。
建設業に未来はない?若者離れは当たり前?10年後の建設業はどうなる?
建設業は、他業種と比べて給与水準が高いのにも関わらず、若者離れが進んでいます。つまり、求職者の立場として給与の高さだけが、就職先を決める原因ではないのです。
では、具体的に就業者の割合は、どれくらいになっているのでしょうか。
ここでは、建設業に携わる就業者の推移を、過去20年間のデータから解説していきます。
また、建設業は世間からどのようなイメージを持たれているのかも、あわせて見ていきましょう。
建設業がどれほど人手不足なのか国土交通省のデータから参照
ここでは、実際に建設業でどれほど人手不足なのかを、国土交通省のデータをもとに解説していきます。
上記のデータからわかるように、建設業内で就業者数が徐々に減少しています。また、他産業と比較すると、建設業は29歳以下と55歳以上の人数差が大きく開いています。そのうち60歳以上は全体の約4分の1を占めており、29歳以下は全体の約10分の1と深刻な状況です。
高齢化による引退を控えている一方で、若者離れが進んでいるため、今後建設業が成り立たなくなっていくことが予想されます。
次に、労働時間と年間出勤日数を見ていきましょう。どちらにおいても、製造業と比較して建設業が多いことがわかります。ピーク時から見ると減少傾向にあるものの、製造業と比較するとどちらにおいてもまだ差が埋まっていません。
以前よりもワークライフバランスが重視されるようになっている中で、上記のようなデータがある状態では、若者離れが進むのも当たり前といえるでしょう。
建設業に対する世間が持つイメージ
建設業の実際を見てきましたが、世間が持つイメージはどのようになっているのでしょうか。一般の回答者と建設業界の回答者の、建設業界に対するイメージを見ていきましょう。
上記のグラフは、「身近な若者や自分の子供に、建設業界への就職を勧めるか」という、国土交通省が行ったアンケートの結果です。勧めるかどうかの比率に、それほど大きな差はありませんでした。
しかし、勧めない理由に共通のものとして、「危険を伴いそう」「労働時間が長そう」「給料が安そう」が上位を占めています。
つまり、建設業界で問題となっていることは、世間のイメージとして持たれており、働き口として選ぶ人が減る原因となっているのです。
建設業が人材確保のため取り組んでいる対策
建設業はマイナスなイメージを持たれがちですが、私たちが社会の中で生きていくのに欠かせない職業です。この建設業のマイナスイメージと、業界が抱えている問題に対し、国の方から対策が進められています。
ここでは「賃金改善」「労働時間」「女性の働きやすさ」「パワハラ」に注目して、国が進めている対策を紹介していきます。
建設業の賃金改善
技能労働者の確保・育成のために、適正な賃金水準の確保が重要だと考えられています。現在建設業は製造業と比較して賃金が低く、今後追い付くには年平均2.2%の賃金上昇が必要です。この目標を達成するために、以下のような取り組みが検討されています。
- 安定的・持続的な公共投資の確保
- 見積活用時の妥当性確認の徹底
- 積算内訳(工事設計書)の適時公表
- 公契連モデルを大きく下回る団体などを「見える化」し、個別に働きかけ
労働時間の改善
建設業で労働時間が長くなってしまうのは、「短すぎる工期」が原因でした。そのため、1日当たりの作業量が増えてしまい、結果として労働時間が長期化してしまいます。
そこに焦点を当て国は、「適正な工期設定」を勧めることになりました。
時間外労働に関しては、「原則として月45時間・年360時間」を上限として定め、特別な事情がなければ超えられなくなります。もし、上記の時間を超えるようなことが予想されるのであれば、行政官庁の許可を受けることで特別に労働時間の延長が可能です。
また、公共工事・民間工事どちらにおいても、週休2日工事(4週8休)の導入が検討されています。
女性が働きやすい環境を作る
女性は出産・育児により、職場から離脱することもあり、働き続けにくくなっています。そこで、建設業界は「建設キャリアアップシステム」を導入しました。
このシステムは、技能者の就業履歴などを登録しておくことで、スムーズな復職を可能にします。技能経験に応じた採用を検討したり、休職以前のキャリアから復職したりすることが可能です。
まとめ
建設業が人手不足となる理由は、以下の4点です。
- 低賃金
- 長時間労働
- 雇用が不安定
- 男性中心の職場環境
- パワハラの常習化
上記の項目で現場と世間のイメージに大きな差はなく、若者離れを助長する大きな原因です。
若者離れが進む中、就業者の高齢化も進んでいるため、建設業は今後未来はないとまで言われています。
しかしながら、建設業は社会を形成するうえで欠かせないため、以下のような対策が立てられました。
- 技能労働者の賃金改善
- 適正な工期を設定することで、労働時間を改善
- 「建設キャリアップシステム」の導入により、女性が働きやすくする
建設業は危険を伴いますが、仕事の成果がしっかりと残るやりがいがある仕事です。世間のイメージを覆すため、国の方からも対策が立てられているため、今後業界も大きく変わっていくでしょう。