「田舎だから求人が来ない！」「募集しても人が来ない会社」という悩みを抱える地方企業が直面する課題は多岐にわたります。人口の減少、若年層の都市部への流出、そして地域特有の産業構造に起因するスキルのミスマッチなど、これらの問題は地方の採用市場を厳しいものにしています。
加えて、生活環境の魅力不足も、地方での人材獲得を難しくしている一因です。しかし、これらの課題には克服可能な側面もあります。本記事では、地方企業が採用を成功させるための戦略や工夫を、ご紹介します。
田舎や地方の採用は
地方や田舎での採用が一筋縄ではいかない理由は何でしょうか？若者の都会流出による人口減少、特定スキルへのニーズの高まり、そして生活環境の魅力不足が重なり合い、地方企業は新たな人材を見つけるために苦労しています。これらの課題にどのように立ち向かっていけばよいのかを探ります。
人口減少と労働力不足
「人口減少」についてですが、日本をはじめ多くの地方や田舎では、人がどんどん減っています。特に、若い人たちが仕事や学びの機会を求めて都会へ移住することが多いです。総務省統計局のデータによると、2020年には日本の人口が前の年よりも約50万人減少していることが分かります。これは、出産数が減り、死亡率が増えるとともに、若い人が都会に進出してしうからです。
下記は2017年2018年のデータになりますが、都市部は人口が上昇しているのに対し地方では減少していることがわかります。
これが地方や田舎で特に問題になっています。、若い人が少なくなり地域の高齢化が進み、活気がなくなります。そうなると、仕事をする人が減少し、企業の人材確保が難しくなります。
次に、「労働力不足」です。人口が減ると、自然と働ける人も減るわけですが、地方や田舎ではこの問題が特に深刻です。厚生労働省が出した報告によると、日本全体で見ても労働者の数は減少していますが、地方ではもっと深刻なんです。特に、技術や知識が必要な仕事では、そのスキルを持った人を地方で採用することが非常に困難です。
つまり地方の会社が新しい人を雇うのが大変な主な理由は、単純に「労働人口の減少」が原因の一因でもあります。
若年層の流出
若年層の流出について、地方や田舎の人口が減っている大きな理由の一つです。多くの若い人たちは、仕事や学校のために都市部へと移り住んでいます。たとえば、総務省統計局のデータによると、2020年に日本の人口は前年比で約50万人減少しました。これは、出生数が減っている一方で、若い人たちがより多くの機会を求めて都会へ行くからです。
このように若い人が地方から出て行くことで、地方では人手が足りなくなり、地域の活気も少なくなってしまいます。特に、新しい技術やアイデアを持ち込む若年層が減ることで、地方の企業は新しい人材を探すのが難しくなります。技術や専門知識を持った人が少ないため、企業が空いている仕事に合う人を見つけるのが一層大変になるのです。
産業構造の変化とスキルミスマッチ
地方や田舎の仕事の内容が変わってきている、そして地元の人たちのスキルとその仕事が合っていないという問題です。
昔は、地方では農業や漁業、製造業などが主な仕事でした。しかし、時代が変わり、今は情報技術やサービス業など、新しい種類の仕事が増えています。このような新しい仕事は、特別な技術や知識が必要なことが多いです。
しかし、地方にいる人たちは、これら新しい仕事に必要なスキルを持っていないことがよくあります。学校でそのようなスキルを教えていなかったり、新しい技術を学ぶ機会が少なかったりするためです。その結果、地方の企業が新しいタイプの仕事に人を雇いたくても、適切なスキルを持った人がいないという「スキルミスマッチ」が起こっています。
ライフスタイルバランス
生活環境の魅力不足とは、地方や田舎での暮らしが、特に若い人たちや特定の技能を持つ人材にとって魅力的に映らないという問題です。これにはいくつかの要因があります。
一つ目は、教育や医療サービスの質が都市部に比べて劣ることが挙げられます。例えば、地方では大学や専門学校が少なかったり、最新の医療設備や専門医がいないことがあります。これらのサービスは、人々が生活する上で非常に重要な要素です。
二つ目は、仕事以外の生活の充実度です。地方や田舎では、ショッピングモールが少なかったり、レストランやエンターテイメント施設が限られていることがあります。また、公共交通機関の便が悪いために、移動が不便なこともあります。若い人たちは、休日や夜に楽しめる場所が少ないと感じるかもしれません。
三つ目は、キャリアアップやスキルアップの機会の不足です。地方では、新しい技術を学べる機会が少なかったり、キャリアを発展させるための職場が少ないことがあります。特に、専門的な技術や知識を持つ人にとっては、自分の能力を活かせる場が少なく感じることでしょう。
田舎や地方の求人・採用はゼロサムゲームの側面があることを理解する
限られた資源を複数の者が取り合う状況をゼロサムゲームと表現することがあります。この場合の「限られた資源」とは、例えば田舎の企業が直面しているように、利用可能な労働力や求職者などが該当します。この概念を求人市場に適用すると、田舎の企業間で有能な人材を確保しようとする競争が、まさにゼロサムゲームのように捉えられることがあります。
この状況では、他の地元企業との競争に勝って、限られた労働資源を確保する必要があります。そのためには、職場環境の改善、給与や福利厚生の充実、キャリア開発の機会の提供など、他社にはない魅力を打ち出して、求職者に自社を選んでもらう戦略が重要になります。
この魅力の打ち出しというのは全国規模で考える必要はありません。まずは地元で求職している人々の確保を行うため、周辺の企業よりも求人・採用に力をいれることが大事です。
田舎や地方で採用を成功させる方法
田舎や地方での採用問題は、企業側の原因だけでなくその土地固有の問題も関係しており、対策を講じることが難しいと考える人も多いでしょう。確かに課題は多いですが、対処できる方法が全くないわけではありません。
求人情報の充実・明確化
このゼロサムゲームで勝つためには、田舎や地方の企業が直面している一つの大きな課題があります。それは、多くの企業が単に求人を募集しているだけで、求職者が本当に求めている情報を提供していないという状況です。田舎や地方では「ハローワークに応募したいのに求人がない」などといった不満などがありますが、実際は求人がないのではなく「ちゃんとした求人がない」というのが現状で、それが「ハローワークに誰も応募していない」とういうような状況に繋がります。
下記データのように求職者が企業について調べる際、約95％が実際に応募する前に企業の採用ページを確認しています。しかし、企業ホームページや採用ページがない、あるいは充分な情報が提供されていない場合、求職者の応募意欲は大きく下がります。具体的には、76.1％の人が採用ページがないと応募意欲が下がると回答しています。
●企業の採用ホームページを「確認する」と回答した方に質問です。
企業のホームページや採用ページがない（見つからない）場合、応募意欲は下がりますか。
●仕事探しをする時に、どのようなことに不満を感じますか。
特に求職者は、仕事内容について詳しく知りたいと考えていますが、約60％の人が仕事内容に関する情報が少ない、あるいは不明確であることに不満を持っています。加えて、福利厚生や待遇、職場の人々（同僚や上司など）、研修制度や教育制度についての情報も重視しています。
特に田舎や地方の企業が採用ではこれらの情報は非常に重要になってきます。田舎や地方の企業は求人や採用情報に力をいれていないことが多く、これらの情報が不足していると、地方での就職を検討している若者は、「地元で働くのは無理かもしれない」と感じ、結果的に地元を離れる選択をしてしまう可能性があります。
全国に向けて求人募集をかける
全国に向けて求人募集をかける戦略は、特にUターンやIターン希望者や地方への移住を検討している人々を対象とすることが有効です。確かに、仕事のために新たに移住を決意する人は限られているかもしれませんが、元々その地域に根ざしていたり、地方での生活に興味を持っている人々にとっては、魅力的な機会となり得ます。
Uターン希望者、つまり一度地元を離れた人が故郷に戻ってくるケースでは、地元愛や家族との絆、懐かしさなどが強い動機となります。これらの人々に対しては、地元での働き方のメリットや、地域社会への貢献、そして地元での生活の質の高さを強調することが重要です。
また、地方移住に興味があるが、まだ具体的な計画を立てていない人々にとって、全国からの求人募集は新たな可能性を開くことができます。こうした人々に対しては、移住支援制度や地方の魅力、キャリアアップの機会などを前面に出すことで、興味を引き、実際に移住を決意させるきっかけを提供することができます。
そのため、全国に向けた求人募集を行う際には、地方のライフスタイルの魅力や、地元でしか得られない価値を訴える内容を盛り込むことが効果的です。また、具体的な支援策や、地方で働くことのメリットを明確に提示することで、Uターン希望者や移住を考える人々の心をつかむことが可能になります。これにより、わざわざ移住しようとする人が少ないという課題を克服し、地方企業の採用活動を成功に導くことができるでしょう。
求人でいい人が来ない場合はアウトソーシングを検討する
アウトソーシングを検討することは、地方企業にとって有効な戦略の一つです。特に、リモートワークが可能な業務に関しては、地元の労働力に限定されることなく、全国どこからでも優秀な人材を確保することができます。これは、特に専門的なスキルや知識を必要とする仕事、例えばIT、デザイン、編集、コンサルティングなどの分野で特に有効です。また状況によっては事務処理や雑務なども依頼できます。
リモートワークの普及により、仕事と生活の場所を自由に選べるようになった今、地方企業がアウトソーシングやリモートワークを取り入れることは、企業にとっての人材獲得の幅を広げるだけでなく、多様なバックグラウンドを持つ人材による新しいアイデアや刺激を企業内に取り入れる機会にもなります。また、コスト削減の面でもメリットがあり、オフィスの維持費や設備投資の削減につながる場合もあります。
ただし、現場作業が必要な業種では、アウトソーシングやリモートワークの導入が難しい場合もあります。このような場合は、地元の人材を活用する他、UターンやIターンを検討している人向けの特別な採用戦略を立てることが重要です。例えば、地方移住を支援する制度や、地方での生活の魅力を伝える取り組みなどを通じて、移住を検討している人々を引きつけることができます。
アウトソーシングにはランサーズやココナラ、クラウドワークスなど様々なサイトがありますので、そちらも検討してはどうでしょうか。
まとめ
地方や田舎の企業が直面する「求人が来ない」という問題は、確かに複雑ですが、解決への道は存在します。採用ページの充実、全国規模での求人募集、アウトソーシングの活用など、多角的な戦略を練ることが重要です。
特に、95％の求職者が応募前に採用ページをチェックし、その存在が応募意欲に大きく影響する現代においては、詳細な仕事内容、福利厚生、職場環境に関する情報を提供することの重要性が増しています。
また、UターンやIターン希望者に焦点を当てたり、リモートワーク可能な職種ではアウトソーシングを検討することで、地方企業も優秀な人材を確保し、競争に勝つチャンスを広げることが可能です。
地方での採用問題は一朝一夕に解決するものではありませんが、戦略的な取り組みによって確実に改善へと進むことができるでしょう。
